回路にだまされないために

ディレイ回路

回路は書き方によっていろいろな表し方があります。
それぞれ一見違うように見えるので、回路の形だけに惑わされないために。
また、一部を取り出して考えることで回路の働きがよりよくわかたりする。

積分回路の動作を計算式でとらえグラフで解説

非なるが同じ回路

「似て非なるもの」という言葉があるので、反対に 「非なるが似ているもの、同じモノ」 というのも探せばあるのでしょう。

 

この回路は 「コンデンサを試す」 に出てきた回路です。

 

ディレイ機能をもつディレイ回路と紹介しました。

 

ディレイ回路

しかし、あんまり遅れず、一瞬遅くなる回路でした。

積分回路

この回路も横にして書き換えると、こうなります。(これも書き方が違うだけで上と全く同じ回路です)

ディレイ回路変形型

 

この右側の回路、点線で囲んだ部分をみると、回路の教科書などの基礎回路の説明に一度は出てくる、積分回路というものです。

(「積分回路」と言う名前が難しそうで、積分の作用をするという風に考えず、そんな名前と思っておきましょう。)

遠目に眺めると、普通に直接、電池にLEDだけつないだ回路の途中に この「積分回路」が入っているだけの回路です。

 

積分回路-電源 積分回路-積分器 積分回路-LED


実際にコンデンサを”自動的に変わる抵抗”と とらえて、LEDディレイ回路といったこの回路は、形を変えると「積分回路」を通してLEDにつないでいるだけです。。。。

 

ディレイ作用はこの「積分回路」がやってるだけです。

 

上の真ん中のブロック(積分回路)を省いてLEDにつなぐと、単純にLEDが点灯する回路です。

 

積分回路の動作

どんな動作をするか?

では、ラインの間に、この「積分回路」を割り込ませるとどうなるか?

 

結局、「積分回路」が何をするかということになります。

その電圧の上がり方は、対数曲線に似ているので、この関数で近似されます

積分回路-電圧VTグラフ

関数でわざわざ表すとなにが便利かというと、実験しなくても動作がわかる。この曲線をみていると、コンデンサに通電したときの電圧の上昇の仕方がよくわかります。

 

最初はグッと上昇し、その後は緩やかに上昇なかなか伸びず、満タンになるまで○○秒と。
コンデンサを試す の最初の実験回路では、遅れが小さすぎ、遅れがあるかどうかわからない程度でしたが、

  • どのくらい遅れるのか?
  • コンデンサの容量を増やすと遅れ時間はどのぐらい増えるか?

感覚と実験で試して容量を増やすなどしてやってみました。

楽しく実験しながら回路の動作を調べていくのも大事ですが、抵抗値やコンデンサ容量を次々変えて実験する方法ばかりでは「工作」 の領域を出ません。

回路の動作を計算する

これを数学的に式でとらえて計算したり解析することにより、回路の動作をとらえることができます。

それにはある程度の数学の知識が必要ですが、学校でグラフを書いて計算ばかりさせられる数学ですが、現実に電子工作の回路をとらえるためこんなところでも必要になるので、やっぱり基礎は大事です。。。(やっぱり学校の勉強はちゃんとしときましょう(笑)

 

本当に計算でディレイ時間がわかるのか?

本当に対数関数を持ち出せば、”プルアップのナゾ” からつながったこの回路がわかるのでしょうか?

 コンデンサを2つ付け容量を倍にしたり、ダイオードを挟んだりしてディレイさせましたが、どこをどうすれば、どれだけ効果がでるのでしょう?

 

回路のグラフ

「積分回路」のグラフ、このグラフを見たり、計算式からたどります。

 

積分回路-電圧VTグラフ

グラフをみると、

最初は速く、
途中から
ゆっくりと上昇し、

最後はじんわりと
入力と同じ電圧に
落ち着くのがわかります。

 

 

積分回路の電圧計算式

Vc = V[1-e-(t/CR)]

 

グラフを読むと

V=3  つまり 「満タン」3Vまでt=1ぐらい 

しかし

V=1.5 半分 つまり 「半タン」までは約 t=0.15 程度の時間でたどり着いています。

 

スタートは全速で飛ばすが、真ん中から駆け足、終盤はゆっくり歩くマラソン選手のようなゴールへの道です。

 

終盤はゆっくり、じれったく上がるのが積分回路の動作とわかります。

計算式

計算式を使ってみます。

この積分回路の計算式は

 

Vc = V[1-e-(t/CR)]  で表されます

これはeの対数関数で,その動きが近似できます。

 

計算式を実験

実験した回路を当てはめてみます。

 

スイッチをつなげて 0.15秒後には 何ボルトになっているのでしょうか?
各部品の数値を放り込み、0.15秒後には何Vになるか

ディレイ(遅れ)しなかった回路で計算

各部品の容量

  • V=3[V]
  • C=100×10-6[F]
  • R=1500[Ω]
  • e=2.72 t=0.15[s]
  • C*R=0.15 、-t/CR=-1

 

積分回路実験回路図

 

この数値データをこの式に放り込むと
  Vc=3V ×(1-0.368)=1.9V

 

結果はわずかt=0.15:0.15秒後には約1.9Vになります。

 

1.9Vをグラフで読み取ると

積分回路-電圧VTグラフ
LEDは約1.8V程度になれば点灯するので、0.15秒も待たず(ディレイ)せずにLEDが点灯することがわかります。

 

ディレイ(遅れ)した回路で計算

次に、コンデンサを試す で登場した、

遅れがハッキリ実感できた改良型のディレイ回路でt=0.5で計算してみると

 

 ディレイ回路改良型

t=0.5にすると

  • V=3[V]
  • C=2×(100×10-6)[F]
  • R=1500[Ω]
  • e=2.72 t=0.5[s]
  • C*R=0.3 -t/CR=-1.33

 

 

Vc=3V×(1-0.188) =2.44V になります。

 

ダイオードを間に入れて、LEDが1.8Vで点灯するところを 1.8V+0.7V=2.5Vとしていいるので

約2.44Vまで上昇する時間が、計算から0.5秒、約2.5V程度でLEDは点灯するので
この改良型のディレイ回路の遅れは約0.5秒
これなら人の目にも遅れがハッキリ実感できたわけです。

 

しかし、本当に計算した遅れ時間になっているのでしょうか?

計算式を実験する

積分回路の計算式が実際はどのようになるのか?

積分回路の動作を実際に回路で動かしてみます。

 

それでは実験しときましょう。。。。と、いつも通りいきたいのですが、
目をこらしてLEDを見つめ、点灯するまでの0.1秒や0.2秒を正確に測るのは、ナンボなんでも苦しいです! 

今回は、デジタルオシロスコープを使えば全部解決
デジタルオシロは単発現象も記録できるので、電圧がどのような変化をするかグラフのようにして記録出来ます。

 

最初の積分回路の電圧上昇を実験

計算式1

LEDをどけて、オシロスコープで観察したLEDへの電圧を見てみます。 

 

積分回路-オシロスコープ観測1
積分回路-実験回路図1

 

計算式では0.15秒後の電圧は 
t=0.15[s]  Vc=3V ×(1-0.368)=1.9V になりました。
(数式のグラフとほぼ一致

積分回路-電圧VTグラフ

実測の電圧の上昇を見ると、少し違いはありますが、だいたい合っています。
上昇のしかたもホントに対数関数と同じなのがわかります。

コンデンサ容量を2倍にして実験

コンデンサを並列に置き容量を2倍にしてみます

 

 積分回路-オシロスコープ観測図-Cap2倍
積分回路-実験回路図1-Cap2倍

 

コンデンサ容量を2倍にすると
時間が2倍になり、時間スケールを2倍に変えただけで形はほとんど変わらず、計算式のtとCの関係がそのままでています。

計算式から求めた結果は

かなりそのまま実際の回路でも同じになり、計算式でも動作の予測を立てられることがわかります。

 

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